ビー・タイガー系
pH

シュリンプ専門誌・アクアリウム雑誌・公開された学術論文・ウェブ情報を元に作成しています

シュリンプ飼育におけるpHの重要性

シュリンプの飼育において、pHは非常に重要な水質パラメーターの一つです。pHとは水素イオンの量を1から14の数字で表したもので、7が中性、それ未満が酸性、それより大きい数字がアルカリ性を示します。具体的には、水溶液中に含まれている水素イオン(H+)の濃度を表しており、この水素イオンがどのくらいの割合で「電離」しているかによってpH値が決まります。電離とは、電気的に中性な物質が、H+やOH-などの電荷をもつ原子や分子に変化することを指します。pHに影響を与える要素としては以下のようなものがあります。

 

Ca、Mg、Na、Kなどの陽イオン、SO4やClなどの陰イオン。水道水やミネラル材、シュリンプフードに含まれている。

水に溶けると炭酸(H2CO3)となり弱酸性を示す

・バクテリアによる有機物分解

・フミン酸、フルボ酸

・クエン酸

適正pH値の範囲

シュリンプに適したpH値については、様々な見解があります。

 

  • pH 6〜6.5が一般的であるなど

  • pH 5.0〜7.8の間であればOKという意見も

  • pH 6以上、pH 7以下の間がベストなんだと言われることも

実際に専門店から購入したシュリンプの袋の水を測定しても、意外にばらつきがあります。

pHの安定性の重要性

シュリンプ飼育において、特定のpH値そのものよりもpHの安定性が非常に重要です。朝と夜での変動や1週間での変動があると、シュリンプが怯えたり落ち着かなくなったりして、繁殖どころかエサ食いも悪くなります。変化が大きければ死亡することもあります。

pH7.0以下が良いとされている理由

シュリンプ飼育でpHが7.0以下の酸性水質が推奨される大きな理由の一つに、アンモニアとの関係があります。

水槽内で発生するアンモニアは、シュリンプにとって非常に有害な物質ですが、pH 7.0以下の酸性環境では「アンモニウムイオン」に変化し、無害な状態になります。これがシュリンプの飼育には酸性寄りの水質が適しているとされる理由です。

pHに影響を与える要因

アマゾニアなどの栄養系ソイルはイオン交換効果によりpHを酸性に傾けます

ろ過バクテリアが酸素を消費しながらアンモニアを分解し、水素イオンを排出します

KHは水槽内のpHが急激に変化するのを防ぐ「クッション」のような役割を果たします。酸が水に加わると、通常はpHが下がりますがKHが十分にある水では、この炭酸塩/重炭酸塩が酸と反応して中和します。逆に、KHが低い(または0に近い)水槽では、少量の酸が加わっただけでもpHが急激に変動するので、一般的に0~2程度の低い値が推奨されているシュリンプ飼育では急激な変化が起きやすいと言えます。

二酸化炭素が増加するとpHが下がります

CO2はpH変動の最も重要な要因の一つであり、特に水草水槽や二酸化炭素添加を行っている環境では、pHの変動に最も大きな影響を与える要素と言えます。

pH調整のための素材

【マジックリーフ】

マジックリーフはpHを下げる効果があります。これはマジックリーフに含まれる「タンニン」や「フミン酸などの腐植酸」が水に溶け出すことで、水質を酸性方向に傾けるためです。マジックリーフを使用すると飼育水を軟水にしてブラックウォーター化することができます。

使用量には注意が必要です:

  • 入れすぎるとpHが大きく下がり、逆効果になる可能性があります

  • 最初は少量から始め、飼育水が薄い茶色になるよう様子を見ながら調整するのが推奨されています

  • 小型シュリンプの場合は特に、酸性に傾きすぎないよう注意が必要です

小型シュリンプにとっては、マジックリーフは水質調整だけでなく、餌としても活用できます。マジックリーフは分解されると柔らかくなるため、小型シュリンプが好んで食べます。また、マジックリーフの下は稚エビにとって良い隠れ家になるので、生存率が高くなります。

【牡蠣殻】

牡蠣殻は主にカルシウム補給の目的で使用され、水槽内のGH(一般硬度)を上昇させる効果があります。GHの上昇は一般的にpHも上昇させる傾向があるため、牡蠣殻はpHを上げる方向に作用すると考えられます。

牡蠣殻は水質が酸性に傾くと溶け出す性質があります。つまり水質が酸性に傾くと、牡蠣殻が溶けて中性に戻してくれるのです。その時に堆積したヘドロ等のpHを引き上げ、有害な硫化水素を吸着して無害化する力もあります。

シュリンプに関しては、マジックリーフ(酸性)と牡蠣殻(アルカリ性)の組み合わせが有効となることもあります。これは、マジックリーフ由来の酸性物質と牡蠣殻が反応することでシュリンプがカルシウムを吸収しやすい水環境になるためです。シュリンプの殻がしっかりしやすくなって、稚エビの斃死率も下がるようになります。

pH管理の注意点

  • 無理な調整は避ける: 添加剤で無理やりpHを調整するとエビの調子を崩す可能性があります

  • pH降下剤の使用は避ける: pH降下剤などの薬物使用はNGです

  • 換水時の注意: 換水に使用する水のpHが極端に高い場合は下げてから使用するか、少量ずつ慎重に換水する必要があります

  • アクティブソイルの使用: アマゾニアなどの栄養系ソイルで水槽を管理している場合は、それほどpHを気にする必要はありません

まとめ

シュリンプ飼育においては、pH 5.4〜6.8程度の弱酸性環境が適していますが、特定のpH値そのものよりも、pHの安定性が最も重要です。急激な変動を避け、アンモニアが無害なアンモニウムイオンに変化する環境を維持することが、健全なシュリンプ飼育の鍵となります。

マジックリーフや牡蠣殻などの自然素材を使用することで、過度な薬品に頼らずにpH管理ができます。ただし、これらの素材も使用量や組み合わせには注意が必要です。

アクティブソイルを使用し、適切なろ過と水換えを行うことで、自然とシュリンプに適したpH環境が維持されます。栄養系ソイルで飼育している場合はpHに神経質になりすぎる必要はありませんが、定期的な測定と安定した環境の維持を心がける事が大事です。