ビー・タイガー系
水質安定の重要性
シュリンプ専門誌・アクアリウム雑誌・公開された学術論文・ウェブ情報を元に作成しています
水質の安定について
シュリンプは環境の変化に非常に敏感で、水質の急激な変動はストレスや健康問題を引き起こす可能性があります。また、シュリンプにとって、水槽の水は私たちにとっての空気のようなものです。きれいな空気の中で生活するのと同じように、シュリンプもきれいな水の中で生活する必要があります。ここでは水質の安定に重要な要素を解説していきます。
水温
水温を安定させる事の重要性と水温がシュリンプに与える影響を考える。適切な水温管理は、シュリンプの健康、成長、繁殖に直接的な影響を与えるため、飼育において最も注意を払うべき要素の一つです。特に夏場の水温上昇対策と冬場の保温対策が重要となります。
- 適正水温範囲(21℃~26℃)では、シュリンプの成長が促進され、活性が高まります。
- 18℃以下になると活性が著しく低下し、餌を食べなくなり脱皮も止まります。
- 28℃以上になると死亡リスクが高まり、30℃近くになると活性が低下し、死亡する個体が出る可能性があります。
- 22℃~25℃程度が最も繁殖に適しています。
- 水温が低すぎると抱卵や稚エビの誕生が止まります。
- 水温上昇に伴い、シュリンプの代謝が上がります。
- 同時に、水中の溶存酸素量が減少し、シュリンプやバクテリアの酸素消費量が増加します。
- これにより、高水温時には酸欠のリスクが高まります。
低水温では成長が遅くなりますが、色がより鮮やかになる傾向があります。
- 水温の変動は、pHやアンモニア、亜硝酸などの他の水質パラメーターにも影響を与えます。
- 安定した水温は、水槽内の生物学的濾過を促進し、全体的な水質の安定につながります。
水流
水流を安定させる事の重要性と水流がシュリンプに与える影響を考える。適切な水流の強さは、水槽のサイズやレイアウト、シュリンプの数などによって異なります。シュリンプの様子を観察しながら、適度な水流を維持することが重要です。
- 適度な水流は、シュリンプの活性を高め、より活発な行動を促します。
- 強すぎる水流は、シュリンプにストレスを与え、異常行動を引き起こす可能性があります。
- 適切な水流は、水槽内の水質を均一に保ち、酸素を行き渡らせます。
- 水流によって、デトリタス(有機物の破片)が舞い上がり、フィルターに吸い込まれやすくなります。
適度な水流は、給餌時に餌を水槽全体に行き渡らせ、すべてのシュリンプが均等に餌にアクセスできるようにします。※餌のタイプによります
- 水流が弱すぎると、水質の悪化や酸素不足を招く恐れがあります。
- 水流は水面の撹拌を促し、酸素交換を活発にします。これは特に夏場の高水温時に重要です。
適切な水流は、フィルターの効率を高め、水質の安定に寄与します。
酸素
適切な溶存酸素量を維持することで、シュリンプの健康、成長、繁殖を促進し、長期的な飼育の成功につながります。
- 理想的な範囲: 5-8mg/L
- 最低限必要な量: 3mg/L以上
- 25℃の水温では約8.11mg/Lの酸素が溶解可能
- 30℃の水温では約7.53mg/Lに減少
水温が上昇すると溶存酸素量が減少するため、特に夏場は注意が必要です。
- エビの活性維持
- 代謝と成長の促進
- ストレス軽減
- 濾過バクテリアの活性化
- 適切なエアレーション
- 水温管理(26℃以下が理想的)
- 定期的な水換え
- 適切な飼育密度の維持
物理的ろ過
物理的ろ過は、水中の浮遊物質や固形物を機械的に取り除くプロセスで、粒子をろ材で補足するストレーナー効果や重力により粒子を沈める沈殿方法があります。これらを活用する事で、水の透明度の向上や、生物ろ過の補助にも繋がります。主に以下の方法があります。
- 多孔質構造で浮遊物質を効果的に捕捉
- エビの稚エビが吸い込まれる危険性が低い
- 生物ろ過の機能も兼ねる
- 定期的に絞り洗いが必要
- 細かい粒子まで捕捉可能
- 定期的な交換が必要
- 外部フィルターの一部として使用
- 様々な粒度の濾材を組み合わせて使用可能
- 粗い濾材から細かい濾材へと段階的にろ過
- 水槽底面全体でろ過を行う
- ソイルと組み合わせて使用することが多い
- エビの好む環境を作りやすい
注意点として、過度な清掃は生物ろ過に悪影響を与える可能性があるため、バランスが重要。稚エビが吸い込まれないよう、適切な目の細かさの濾材を選択する。物理的ろ過だけでなく、生物ろ過や化学的ろ過とのバランスを考慮する。
生物的ろ過
生物的ろ過は、バクテリアの働きを利用して水中の有害物質を分解するプロセスで、主に生体の排泄物などから発生するアンモニアをアンモニア酸化細菌が亜硝酸に変換し、変換された亜硝酸を亜硝酸酸化細菌が硝酸に変換します。
- 住処としてはフィルターやろ材、ソイル、ガラス面などに定着します。
- 発生源としては、自然発生(空気中や水に含まれている)、生体に付着していた(生物由来)、バクテリア剤などの投入(人為的)が考えられます。
- 増殖条件のポイントとして、高濃度の溶存酸素、pHの安定、水温の安定、安定したアンモニア濃度などが挙げられます。
- アンモニア酸化細菌が定着するには通常2-4週間かかりますが、既存のろ材や物理的ろ過材を転用すると短期間でコロニー形成が可能です。定期的なフィルター掃除時は、水槽水で軽く洗う程度に留めることが重要です。
- 住処としてはアンモニア酸化細菌と同じで表面積が多いほど、多くのバクテリアが定着します。
- 発生源としては、自然発生(空気中や水に含まれている)、生体に付着していた(生物由来)、バクテリア剤などの投入(人為的)が考えられます。
- 増殖条件のポイントとして、エアレーションと適度な水流、pHの安定、水温の安定、安定した亜硝酸濃度が挙げられますが、過剰な酸素は逆効果となります。
- 亜硝酸酸化細菌が定着するには通常2-4週間かかりますが、既存のろ材や物理的ろ過材を転用すると短期間でコロニー形成が可能です。安定したコロニー形成後は、硝酸塩濃度を50ppm以下に保つための定期的な水換えが重要となります。
科学的ろ過
水中の溶解物質を吸着・除去することで水質を安定させるプロセスで、活性炭などで物理吸着、ゼオライトなどでイオン交換、リン酸塩吸着材でリンと結合させる事を指しますが、あくまで補助的な手段であり、基本的な生物ろ過と物理ろ過が適切に機能していることが前提です。使用する際は水質検査を頻繁に行い、必要最小限の期間だけ活用することが重要です。
ゼオライトを一時的に使用し、使用後は速やかに撤去
イオン交換樹脂で過剰なミネラルを調整
交換時期を過ぎると逆に物質を放出(ブレイクスルー現象)するので管理に注意する。
栄養分まで吸着したり、水質を急変させてしまった場合にシュリンプへストレスを与えてしまうので注意する。
水換え
シュリンプの飼育における水替えは、エビの健康と水質の安定を維持するために非常に重要で、足し水だけで管理する場合は水替え時より、慎重な水質検査と水質調整が必要となります。
- 頻度: 1~2週間に1回
- 水量: 総水量の10~15%
- 水質: RO水またはカルキ抜き水を使用
- 水温: 水槽の水温と±1℃以内に調整
- TDS: 既存の数値とミネラル添加剤などで調整
- 水の準備:
- RO水またはカルキ抜き水を用意
- ミネラル添加剤でTDSを調整
- 水温を合わせる
- 古い水の排出:
- プロホースなどを使用し、静かに排水
- 底床を乱さないよう注意
- 新しい水の注入:
- エアチューブを使用し、ゆっくりと注水
- 点滴法を採用すると安全
- 水質チェック:
- 水替え後、TDSやpHを確認
高密度で飼育している水槽は、週一回の水替えにしたり、数匹のみでゆったり飼育飼育している水槽は二週間に一回の水替えにしたり調整する事も大切です。
餌やり
餌やりはシュリンプの健康と繁殖だけでなく水質の安定にも繋がります。また、最適な餌やりとは、評価の高いシュリンプフードを定期的に与える事ではありません。シュリンプの状態と水質を常に把握し、適切な量と種類の餌を与えることが重要です。過剰給餌は水質悪化の主因となるため、与える量を控えめにしたり、食べ残しをすぐに除去する事が大事です。
匹数
適切な飼育密度を維持することで、水質の安定化が図れ、シュリンプの健康と繁殖成功につながります。適切な飼育密度とは水質や水槽のサイズ、水量、ろ過サイクルによって大きく変わりますが、水質維持(主に硝酸塩生成量)と酸素供給(シュリンプの酸素消費量)の観点で考えると水量(L)×密度係数で算出する事ができ、1Lあたり3匹までを上限の目安とすることができます。
- 飼育密度が高いほど、シュリンプの排泄物が増え、アンモニアの発生量が増加します。
- これにより、硝化サイクルが促進され、最終的に硝酸塩の蓄積が早まります。
- シュリンプの数が増えると、酸素消費量も増加します。
- 特に夏場の高水温時には注意が必要です。
シュリンプの排泄物や餌の残渣により、水中の溶解物質総量(TDS)が上昇します。
- 飼育密度が高いと、pHの変動が起こりやすくなります。
- 特に、硝化作用によりpHが低下する傾向があります。
照明
適切な照明管理は、シュリンプの健康と水質の安定に重要な役割を果たします。水草の成長、微生物の活性化、プランクトンの増殖を通じて、総合的に水質を改善し、シュリンプにとって理想的な環境を作り出すことができます。
- 適切な照明は水草の光合成を促進し、水中の二酸化炭素を消費して酸素を供給します。
- 水草は窒素やリン、カリウムなどの栄養分を吸収し、水質を安定させます。
- 照明は珪藻や緑藻の発生を促し、これらが微生物(ワムシやケンミジンコなど)の餌となります。
- この微生物生態系が水質浄化に貢献します。
- 一部の有機物分解バクテリアは光を必要とするため、適切な照明がこれらのバクテリアの活性を促進します。
- 活性化されたバクテリアは有機物をより効率的に分解し、水質を改善します。
- 適切な照明は植物性プランクトンの増殖を促進し、これが動物性プランクトンの餌となります。
- プランクトンの増殖は水質の安定に寄与し、特に稚エビの生存率向上にも繋がります。
- 過度な照明は藻類の異常増殖を引き起こし、水質悪化の原因となる可能性があります。
- 照明時間は通常1日8~11時間程度が適切とされています。
その他の環境調整方法
シュリンプの飼育において、上記で説明した内容以外にも水質安定に優れたアイテムがあります。それらの特性は多岐に渡りますが、ここでは水質安定に特化した内容を説明していきます。
- pH緩衝作用
- 弱酸性(pH 6.0-6.8)を維持し、急激な変動を抑制
- レッドビーシュリンプの好む環境を長期的に提供
- 硬度調整
- GH(総硬度)とKH(炭酸硬度)を適正範囲に保つ
- 理想的なGH: 4-6度、KH: 0-2度を維持
- 栄養塩の吸着と徐放
- アンモニアや硝酸塩を吸着し、水質悪化を防ぐ
- 植物の成長に必要な栄養分を徐々に放出
- 微生物の生息場所提供
- 多孔質構造が有益な微生物の繁殖を促進
- 生物濾過能力を向上させる
- 栄養塩の吸収
- 硝酸塩やリン酸塩を吸収し、水質悪化を防ぐ
- アンモニアの直接吸収も可能
- 酸素供給
- 光合成により水中に酸素を供給
- 特に夜間の溶存酸素量維持に貢献
- pH緩衝作用
- CO2の吸収により、pHの急激な変動を抑制
- 微生物の生息場所提供
- 有益な微生物の繁殖を促進し、生物濾過を強化
- 遮光効果
- 過度な光を遮り、藻類の異常増殖を抑制
- pH緩衝作用
- タンニンの放出により、弱酸性(pH 6.0-6.8)を維持
- 急激なpH変動を抑制
- 抗菌・抗真菌作用
- 天然の抗生物質様物質を含み、病原菌の繁殖を抑制
- エビの免疫力向上に寄与
- 重金属の無毒化
- タンニンが重金属イオンと結合し、無毒化
- 有機物の分解促進
- 葉の分解過程で有益な微生物が増殖
- 水質浄化に貢献
- ストレス軽減
- 自然環境に近い水質を作り出し、エビのストレスを軽減
- pHの緩衝作用
- 牡蠣殻の炭酸カルシウムが徐々に溶け、pHを 7.0前後 に安定させます。
- ソイル使用時の酸性化(pH低下)を抑制し、急激な変動を防ぎます。
- 硬度(GH/KH)の調整
- カルシウムとマグネシウムを補給し、GH(総硬度)を 4-6°dH に保ちます。
- KH(炭酸塩硬度)を 2-4°dH に調整し、水質の安定性を高めます。
- ミネラル補給
- エビの脱皮に必要なカルシウムを供給し、殻の形成を促進します。
- 脱皮不全や軟殻症の予防に効果的です。
- 微生物の活性化
- 多孔質の表面がバクテリアの繁殖を促進し、生物濾過を強化します。